お砂糖ひとさじ

同性カップルの妊活の記録

大喧嘩

 

ここ数日、2人とも忙しくてギスギスしていたのだけど、案の定、妊活の今後について大ゲンカになった。

 

シリンジ法も4回が惨敗に終わり、フーナー検査の結果が悪かったことで、先行きが不安になったこと。


焦りはじめた奥さんが、選手交代をほのめかし始めたこと。


身近な人が流産したこと。

 

 


原因はいろいろとあるのだけど、争点になったのは、


① どこまで不妊治療をやるのか

② 奥さん⇄私の選手交代は有りか無しか


とくに、②は2人の意見が全くの平行線で、話し合いにならない。


奥さんは、たとえ遺伝子上は他人でも、私の遺伝子をもつ子を自分の子どもとして受け入れられる人。

私は奥さんの子どもを愛せないわけではないけど、遺伝的に全くの他人になる事実には、少し引っかかるところがある。

 


これは無精子症の男性が、第三者から精子提供を受けることに抵抗があるのと同じ。


そもそも、奥さんのように、【自分が関わらなくても、パートナーの遺伝子を継いだ子を育てたい!】って思う人の方が、かなり稀だと思うのだけど。


この感覚の違いが埋まらない。


だからここ数ヶ月、私が少しでも妊活についての愚痴をこぼすと、奥さんが「じゃあ私が代わるよ!」って言うのも、ただの脅しのように聞こえて、追いつめられる気分だった。


奥さんとしては、自分の産んだ子を私が受け入れないことが許せない、というか悲しいし、私としてはごく普通の抵抗感を人でなしみたいに言われて腹が立つしでもうヒートアップ。

 


妊活についての悩みって、簡単に友達に相談できないから、互いにガス抜きができないのね。


そして、同じ立場の人はあまりいないから、共感してもらえる相手も少ない。

 

 


結婚式以来はじめて「別れる!」って怒鳴った。

 


終いには、奥さんが悪口を言いながら、人を煽る変なダンスをはじめたので、もうブチキレて、迂闊にもクスッと笑った自分にもキレて、ともかく怒りまくった。

 


2人では収拾がつかなくなったので、ドナーファミリーを夕飯に招いて、皆んなで恒例のモグモグタイム。

いまの時点での、悩みや不安を聞いてもらった。

 


私は悩むと人をシャットアウトしてしまう傾向があるのだけど、なぜか2人の言葉は素直に入ってくる。

 


ドナパパさんとママさんのアドバイスや考えを聞くうちに、パートナー同士の信頼感とか愛情が透けてみえて、さっきまでの自分たちが恥ずかしくなってきた。


相手への思いやりが足りなかったなぁって。

 


進む道を一緒に考えてくれる人がいる。

家族が多いって、なんて素晴らしいこと。


グラスが空になる頃には、すっかり胸のつかえが取れていた。


2人を見送ってベッドへ入ろうとしていたら、奥さんがニコニコしながら、こう言った。

 

 


「私たち家族になったから、別れるときには手続きがいるんだね!」

 


ああ、そうか。

恋人ならば「別れる」の一言で終わるけど、養子縁組でも家族になれば別れるのに手続きが必要なのか。

 


こんなことが嬉しいなんて。


怪我の功名ってやつかな。