守ってあげたい
母さんに誕生日おめでとうの電話したとき、妊活について少し話した。
反対される訳ではないけど、ネガティブなことや、心配ごとしか言わない母に、ちょっと傷つくわ。
もし2人が別れたら、婚外子を抱えたシングルマザーになってしまう、とか。
結婚式のときもそうだったけど、昔からLGBTフレンドリーな母が、私のことになると、急にマイナス発言ばかりするのが謎だった。
でも、自分も子どもをもつことを考えた今、ようやく理由が分かったよ。
母さんは、私に「イージーモード」の人生を送って欲しかったのね。
なに1つ苦労せず。
まるでユーミンの『守ってあげたい』の歌詞みたいに。
思えば、母さんも父さんも、どちらかといえば人生イージーモードの人たち。
だからこそ、子どもにも同じように、真っ平らな道を歩んで欲しかったのだろう。
そのために、ローラー車で道をならしてたのに、私がマッターホルンを登りはじめたから、想像を絶したのだと思う。
まして、横には、平らな道を行く弟夫婦がいるわけだし。
母にとっては、義妹の人生が幸福の象徴なのね。
確かに、簡単に幸せが手に入るなら、それに越したことはないとは思うけど…
山登りも悪くないんだよ。
頂きに立った者にしか見えない景色もあるし。
そういえば、少し前に、酒に酔った父さんがポツリと言っていた。
「知らない間に、自分はこんなに歳をとってしまった。まだ何も成し遂げていないのに。」
親から引き継いだ医院に美人な妻、外車に乗り、趣味は海外旅行とゴルフ。
側から見たら理想的な人生を送っている父が、こんなことを言うのは意外だった。
山登りはリスクも苦労も多いけど、「何かを成し遂げようとする」高揚感は最高だし、人生すべてがドラマティック。
幸福論って難しい。
平らな道と山登り。
どちらにも幸せがあることを、いつか分かり合えたらいいな。
世界を救う旅路ではなく、自分を救う旅に出かける。そうすることで、あなたは世界を救うことになります。
ジョーゼフ・キャンベル