赤ちゃんと僕 後編
地味にレールの上を行く 出来の良い弟と、すべてのレールをぶっ壊して自由に生きる姉。
性格も真逆だし、顔も似てない2人だけど、双子みたいに息ピッタリなときがある。
同じCDを、同じタイミングで買ってきたり。
全く別の場所で、同じことをしていたり。
一番驚いたのは…
はじめて奥さんを紹介したとき、弟が奥さんの腕時計を見て「あ…」って声を上げたのね。
その時計、私が誕生日にプレゼントしたものだったのだけど、弟も彼女の誕生日に、全く同じものを贈っていたことが判明!
限定品だったのに。
遺伝子って怖いわ〜。
遠距離恋愛中だった奥さんのことを、誰より先にカミングアウトしたのも、弟だった。
自分に何かあったとき、こいつならきっと奥さんに知らせてくれると思ったから。
私よりデカくなったし、頼りにはしているけど、やっぱり守ってやらなきゃいけない存在で。
泣きながら後ろをついてきたマッキが、お嫁さんをもらったり、お父さんになるのは、不思議な感じがする。
正直なところ、彼の平穏な人生に、エキセントリックな姉は邪魔だろうなって感じていたから、弟の新しい親族には、存在を隠されると思っていた。
だから、弟が義妹の両親に、私と奥さんのことをちゃんと話してくれたことは、本当に嬉しかったんだ。
生まれたての姪っ子を見たとき、小さなヘーレン氏に会った日のことを思い出した。
赤ちゃんに会いに行った父や母も、きっと遠い昔を振り返ったのじゃないかな。
命が巡り、人の思い出も巡る。
失われた時を戻すことはできないけれど、
これからきっと、この娘の成長と共に、モノクロの時間が鮮やかに息を吹き返す瞬間がある。
父や母が、私の中に、亡き両親の面影を見るように。
なんだか素敵な秘密に気づいた気分。