赤ちゃんと僕 前編
姪っ子が生まれてから、数日。
ウキウキと職場の人に写真を見せたりして、親バカならぬ叔母バカだった。
はじめて姪を見たとき、弟の小さい頃にそっくりで、まるでデジャブを見たような不思議な感覚に陥ったのね。
私と弟は、6歳離れた2人兄弟。
ヤツが生まれるまで、私は1人っ子。
すべてを独り占めしていたので、弟は間違いなく『招かれざる客』だった。
6歳の私は、誰かに世界を分け与えられるほど、子どもでもなかったし、それを許せるほど大人でもなかった。
弟が生まれるまで、母さんに毎日「弟と自分のどっちが好きか」を問いつめていたらしい。
弟が生まれた日、私は一晩中グズって、ふてくされたまま、父親に連れられて近所の産婦人科へ行った。
ガラス越しに見た小さいヤツの第一印象は…
頭が三角!!
医者の勤務の都合で、陣痛促進剤を使ったせいか、はたまた弟の頭がデカかったせいか…
めっちゃ頭の先が三角になってたんだよね。
6歳の頃の記憶なんて、ほとんどない。
しかし、このショッキングな初対面は、ハッキリと覚えているから、よほど衝撃的だったのだなぁ。
( コイツこんなに頭が三角で、この先の人生大丈夫かな…)って思ったもん。
幸いにも、次に会ったときには、頭の形は普通に戻っていたけど。
私を十月十日も怯えさせたモンスターは、ちっぽけな生き物だった。
オギャーと言えず、『ヘーレン!ヘーレン!』と変な声で、フニフニ泣いていた。
私は、そいつをヘーレンと名付け、観察することにした。
ヘーレン氏は、非常に無力で、ともかくよく泣いてた。
ウンチをして泣き…
オモチャを落として泣き…
お風呂に入っては泣き…
ちょうどその頃 我が家にやって来たビーグルの子犬も、ヘーレン氏も、私にとっては同列だった。
新参者の子分2人。
ワンコはすぐに大きくなったけど、ヘーレン氏はヘーレンと泣かなくなり、歩けるようになってからも、相変わらずピーピーと泣いていた。
この頃、家族からは、名前を略してマッキ君と呼ばれてた。
破天荒な姉に泣かされながらも、マッキ君はどこにでも着いてくる。
小さい子分は、いつしか冒険のバディになった。