海賊人生
ちょっと前に若い子から相談ごとをされた。
自分のセクシャリティと、同性の恋人との未来について。
その人望の無さから、滅多に人生相談されない私ですが、彼女がまるで昔の自分みたいで、なんだか微笑ましい感じがしたわ。
本人は悩んでいるのだから、失礼な話だけど。
『この生き方を選んで、幸せになれるのか分からない』
『自分といると、彼女が幸せになれない』
昔どっかで聞いた(言った)ことあるフレーズ。
LGBTの認知度は数年で格段に上がったし、パートナーシップ制度なんかもできたけど、結局、若い子たちがぶつかる壁は変わってないのね。結局はそこか〜、みたいな。
私のこと、奥さんのこと、2人と家族のこと、これまでのこと…
いろいろ話した。
船乗りになりたい若者に酒場で出会った海賊、みたいな気分になったわ。
ほの暗い大海を前に、立ち尽くす気持ちは良く分かる。
地図も無ければ、ロープの結び方も分からない。あるのはコンパスと装備が十分とはいえない小さな船。
本当に方角が分かってんのかイマイチ怪しい一等航海士を連れて、不安なまま着水した昔が懐かしい。
少年…
何も見えないと思っていた黒い海も、目を凝らしたら、波の間を進む船が何艘もいることに気づくはず。
そしてその船には地図にはない海を旅してきた海賊たちが乗っているのだよ。
みんな片手に自分で描いた地図を持って。
それをつなぎ合わせたものを頼りにして、また別の船が旅に出る。
潮の流れが知り尽くされた航路を外れるのは、勇気がいること。
でも別の海流にのったら、まだ誰も見つけていない景色やお宝に出会えるかもよ。
私もいつかメリル・ストリープ級の貫禄で、分厚い地図をポンと若造にくれてやりたいわ。